とある針灸師の実情

針灸師・稻垣順也が、終わりのない自己紹介を続けていくブログです。

癒やし癒やされ

 

僕みたいなメンタル木綿豆腐な人間が臨床家を続けていられるのは、いつも絶妙な所で患者さんに救われるからなんだなぁ。

 

十代の女の子の舌先に在った赤黒いブツブツが、薄まっていた。

そしたら、口から出てくる世界や家族に対しての言葉も、優しくて明るめなものに変わっていたよ。

人は、宿命に対して無力なだけの存在ではないと、僕の方が教えられている。

怒りの連鎖は、やっぱり止められるのかも知れない。

 

極みを目指す覚悟が医療者を楽にする

 

有病不治,常得中医.

これは、『漢書』の「芸文志」の「方技略」などにおいて紹介されていることわざである。

これを僕なりに意訳すると、「病気になっても医者に掛からず、成り行きにのみ任せておくのは、いつの時代でも中級の医者に掛かるのと同じ価値が有る」となる。

ここではまず、患者にとって価値の有る医療者がいかに少ないか、しかも、それが歴史的には珍しくない状態であることが述べられているように思う。自然治癒力以上の働きが出来る医療者は、いつの世も半分に満たないと言っているのである。

また、低級な医療者による不適切な対処が、病人にとってかえって害悪となり続けている現状を述べてもいるだろう。素朴な対処法しか無かったはずの前漢の時代でさえそう言っているのが実に面白い。

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龍角散の効かせ方

 

時代の流れと共に起こったもろもろの進歩により、現在は、伝統医学の恩恵を安価かつ手短に享受できる時代なのである。

例えば、龍角散*1

*1:ここでの「龍角散」とは、「株式会社 龍角散」が販売している「龍角散」という製品のこと。ちなみに、世間で「龍角散のノド飴」と呼ばれている物は、「株式会社 龍角散」が販売している「龍角散ののどすっきり飴」という製品のことであり、つまりは「龍角散社が製造したノド飴」なのであって、成分的には「龍角散」とはまた別物で、実は「龍角散」がノド飴化した物ではないのである。正直、今回の投稿はこれを語りたくて書いた。

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針を刺された後の不調は「はり師」に聞け

 

この四月より、ある患者さんの通院ペースを毎週から隔週へと落とすことになった。

その患者さんは鍼灸師であり、『鍼道 一の会』の数年来の会員でもある。

鍼灸学校の卒業後すぐ勉強しに来て下さったのだが、一年目の途中から体調を崩され、以降は自宅で療養しつつ、インターネットで動画を視聴するという形で継続されることになった。

僕は、「病院でも原因が不明の咳が続いている」と聞き、「必要であれば何なりとご相談ください」と、暗に鍼灸治療をお誘いしてみたりはしたのだが、しばらくして連絡を取り合わない日々を迎えてしまった。

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3月12日の出来事・後編

 

中編の続き】

西洋医学では、喘息を起こす人は、分泌物やむくみのせいで気道(空気の通り道)が狭まっていると言う。

そのため、発作時には、気道を広げる効果を持った薬が使われる。

人が自力で気道を広げる場合は、自律神経の中では「交感神経」の働きが必要となる。

もし「副交感神経」の働きが強まると、気道は……反対に、狭まってしまう。

鍼灸の論文の中には、特定のツボへの刺激で「副交感神経」の働きが高まったと思われるものが有る。

大阪医療技術学園専門学校の播貞華先生が行った実験においては、眉頭に在るツボへの鍼で、心拍数の減少傾向がみられた。鍼で、副交感神経の活動を促す反応が引き起こされたのである。

他に有名な論文としては、向こうずねに在るツボへの鍼で副交感神経の活動が高まったと言うものも有る。

これから僕が「ロシアの魔女」(通称)にする針が、それらと同様に働いたとしたら……まさしく致命的である。

ここでの「波乱」は絶対に許されなかった。

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3月12日の出来事・中編

 

前編の続き】

僕の懸念……それは、「ロシアの魔女」(通称)に対して、近頃、望むような治療成績を挙げられていないということだった。

実は、この五日前にも、僕は彼女に針をしていた。

東洋医学では、顔色や脈の手触りといったものが治療効果を判定する指標となるのだが、針を終えた後のそれらは、いつも悪くなかった。

むしろ、会心の出来だったりした。

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3月12日の出来事・前編

 

『鍼道 一の会』のブログで既に報告してある通り、3月12日の日曜に、大阪医専の卒業生のための勉強会に参加してきました。

blog.ichinokai.info

 

この日を僕は、実に平穏な気持ちで迎えていた。

ゲスト講師としてのプレッシャーなどは特に無く、むしろ、妹分である江見木綿子先生の教師っぷりを初めて見られる楽しみが有った。

江見先生と受講者の皆さんとが成立させる勉強会の雰囲気は、熱意やみずみずしさで満たされるに決まっていた。

そんな現場で、僕自身も学びや刺激を得て帰ることだろうと、疑わずに居た。

 

勉強会の開始は13時30分からだったが、僕は12時前に到着していた。

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