とある針灸師の実情

針灸師・稻垣順也が、終わりのない自己紹介を続けていくブログです。

僕が怒ること

 

まずは、「逆子」が虚側(と呼ばれる状態)の至陰(という足先に在るツボ)へ知熱灸(ジンワリとした温かさを感じさせる程度のお灸)をした翌日に治ったことを報告しておきます。

 

ただし、エコーで確認してくれたお医者さんへ妊婦さんが「昨日お灸をしてもらった」と語ったところ、「お灸で逆子が治るなんてあり得ない」と完全に否定されたとのことでした。

 

……あのですねぇ。

 

あ。鍼灸を否定されるのは、僕としては構いません。

医師や国家のお墨付きが有ろうと無かろうと、僕は自分の信念や直感に基づいて追究を続けるだけですし、僕からすれば「否定するのは損なのに」と感じるだけですし。

 

僕が気に入らないのは、そのお医者さんの仕事ぶりにおける「論理的整合性の無さ」なんですよね。

と言うのは、そのお医者さん、逆子を見付けた時には「逆子体操をしていきなさい。ただ、もうこの胎齢だから、逆子体操では間に合わないかも知れないよ」とおっしゃっていたそうなんです。

 

「逆子体操ではもう治らないかも知れない」と判断していたものが、お灸の影響ではなく自然に治ったのだとしたら……ちょっとした奇跡が起こったと言えますよね?

その妊婦さんが嫌がっている帝王切開を、奇跡的に避けられるかも知れない展開な訳です。

だったら……普通、一緒に喜びません?

クライアントの妊婦さんに対して、お灸を否定するより前に、まずはしっかり祝意を伝えたくなるものだと僕は思うんですけど。

 

しかも、「逆子体操ではもう治らないかも知れない」と判断していた程のものが、お灸の影響ではなく自然に治ったのだと主張することは……逆子体操の価値をおとしめることになりやしませんか。

そもそも、どんな思いで逆子体操を勧めておられたんでしょう。最初から経過観察を勧めておけば良かったじゃないですか。

逆子体操を考案した人は、きっと、妊婦さんの力になりたいという一心で仕事をしておられたはず。

そして、そんな考案者の姿勢を信頼して真剣に逆子体操に取り組み、逆子を克服された妊婦さんは少なくないはずです。

そういう歴史に敬意があれば、灸への否定より前に、クライアントへ贈りたくなる言葉はあるでしょうにねぇ。

 

僕は、自己矛盾を起こしていると言いますか、詭弁をためらわないと言いますか、そういう生き方を平然と出来る人間に、つい腹を立ててしまうんですよね。

皆様、僕が自己矛盾を起こしていると感じられた時には、どうかご指導ください。

反省に努めます。

 

あと、専門分野を持つ人が、事実を説明するための努力を放棄し、無視に徹するのもいけ好かないですねぇ。

学問の実践者としては、見苦しい。

お医者さんには西洋医学の美しい実践者であることを強く期待しています。

 

僕だって、鍼灸における「経絡治療」というやり方を学術的に否定したりはしていますが、その療法を開発したり実践したりしてこられた先人の熱意や、その療法によって救われた方々の思いを軽んじたことは、一度も無いつもりです。

だって、臨床家を自負する以上は、臨床という、人と人との信頼関係の上に成り立つ行いを、分野や流儀の差異を超え、敬愛せずには居られませんからねぇ。